小児の口腔機能発達不全症

1.口腔機能発達不全症について

「食べる」「話す」「呼吸する」などのお口の機能が十分に発達しない、異常があるなどの15歳未満のお子様の「口腔機能発達不全症」に対して新しい病気として分類され、治療に際して保険診療が使えるようになったため、少ない費用でどなたでも気軽に治療が行えるようになりました。子供のうちのお口の機能の異常は生涯を通じて様々な成長や健康に悪影響を及ぼします。大きな問題になる前に速やかに問題点を見つけ的確に対処することによってお子様の健康な発達を周りの大人で支えていきましょう。

徳川歴代将軍に学ぶ口腔機能

江戸時代の武将は生まれるとすぐに母親から引き離され乳母が育児をする習慣がありました。

その習慣は時代を経るにつれてさらに強くなり、食べることを含めあらゆる身の回りのことを何も自分でやらないまま育っていった結果、徳川将軍では代を重ねるごとに顎が細く・長くなっていってしまいました。

このことからも如何に誤った子育てが良くないかがわかります。


2.代表的な口腔機能発達不全症の問題

①よく食べられない

「食べる」という動作には「食べ物を口で捉える」「前歯で咬み切る」「奥歯ですり潰す」「ペースト状の塊にする」「喉に送り飲み込む」といった一連の動作が無意識のうちに行われます。

  1. 食べ物を口で捉える:食べ物が口に入りそうになると、自分から上唇を使って食べ物を迎えに動かし、口の中に入れると口をしっかり閉じて食べ物を口の中で保持します。
  2. 前歯で咬み切る:口に入れるには大きな食べ物は前歯でしっかり咬み切って小さくします。
  3. 奥歯ですり潰す:口の中に入った食べ物は奥歯の咬合面に載せられ小さくすり潰されます。
  4. ペースト状の塊にする:奥歯ですり潰された食べ物は唾液とよく混ぜられペースト状になります。このペースト状のものを飲み込みやすいよう、舌を使って塊にします。
  5. 喉に送り飲み込む:ペースト状で塊にまとめられた食べ物は口を閉じ、舌の力や喉の力を使って喉の奥に送り込み、飲み込む瞬間に息を止めて食道まで運びます。

しかしこれらの動作を正しく習得するには出生後の授乳から離乳食・常食への正しい移行、咀嚼・嚥下を支える体幹作りなどが必要になります。

この方法や順序を間違えてしまうと悪習癖が身についてしまい、その対応が遅れるほど軌道修正が難しくなります。


②滑舌(かつぜつ)が悪い

正しい発音を行うには正常な唇・舌・喉の動きが欠かせません。

滑舌が悪いということは、これらの機能が異常である一つの兆候です。

よく「この子はまだ赤ちゃん言葉が抜けないけれど、大きくなったら自然に治るからそれまで様子を見ましょう。」と対応されることをよく耳にしますが、問題を放置したまま様子をみても良くならないことが大半です。

 

正しい発音を行うには正常な唇・舌・喉の動きが欠かせません。

滑舌が悪いということは、これらの機能が異常である一つの兆候です。

よく「この子はまだ赤ちゃん言葉が抜けないけれど、大きくなったら自然に治るからそれまで様子を見ましょう。」と対応されることをよく耳にしますが、問題を放置したまま様子をみても良くならないことが大半です。


③いびきをかく

いびきは喉の空気の通り道が狭くなり、その狭いところに呼吸の空気が通過する際に振動による音が生じて起きる現象です。

原因としてアデノイドや口蓋扁桃等の喉のリンパ組織が腫れてなることもありますが、下顎が後方に下がりすぎる、舌が下方に沈下する等によってもいびきが生じます。

特に下顎が後方に下がる、舌が下方に沈下することは口腔機能と大きく関連しています。


④お口ポカン

いつも口が開いていると発育上だけでなく健康上も大きな問題を生じます。

歯並びは内からは舌が、外からは頬や唇が押し合い、そのバランスで歯が並びます。

しかしずっと口が開いているとこの舌・頬・唇の筋肉のバランスが崩れてしまい、歯並びが崩れてしまいます。

またずっと口呼吸でいると、鼻のフィルター効果や加湿効果が得られず風邪やインフルエンザなどにかかり易くなります。さらに鼻呼吸による脳の冷却効果も無くなり脳への悪影響を生じます。


⑤歯並び・噛み合わせが悪い

歯並び・噛み合わせが悪くなる原因には遺伝的な要素もありますが、お口の機能的な問題よる要素も非常に大きいです。

正常な乳歯列は以下の要素が挙げられます

  • 歯と歯の間に隙間がある
  • 上下の前歯が先端同志で咬み合う(噛み合わせが深くない)
  • 上下歯列の真ん中が顔の真ん中と一致している
  • 奥歯の噛み合わせ(ターミナルプレーン)が正常(一般の方には判別困難)

異常な歯並び・噛み合わせには以下のものが挙げられます

  • 叢生(乱ぐい歯)は歯のサイズに対して土手となる顎の発育が悪くて並びきらないために起こります。
  • 上顎前突(出っ歯)の多くは上顎が出過ぎているのではなく、下顎の発育が悪いために相対的に上下の関係で出っ歯に見えてしまいます。
  • 反対咬合(受け口)の多くは下顎が出過ぎているだけでなく、上顎の発育が悪いため受け口に見えてしまいます。
  • 開咬(前歯の上下的なすきっ歯)は舌や嚥下の機能的な問題を深刻に抱えており、非常にその改善が難しいです。

3.口腔機能発達不全症への対応

①食事指導

日本の厚生労働省から発表されている離乳食のガイドでは18カ月を目途に離乳の完了を推奨しています。しかもまだこの時期は殆どの子供で乳臼歯が生え揃っていないので食べ物を歯ですり潰すことが出来ないのにご飯を推奨しています。

咀嚼能力が備わっていない段階で食形態を上げてしまうと、下顎を奥に押し込んで食いしばった噛み方を覚えてしまいかえって口腔の発育を抑制させてしまいます。

 

一方WHOでは理想的な成長、発達、健康を促すために生後6カ月まで母乳のみの育児を行い、 その後は適切な食事を補いながら2歳かそれ以上まで母乳を続けることを推奨しています。

 

また江戸時代、香月牛山によって書かれた育児書「小児必要養育草」では

1歳半までは母乳中心

下の歯が生える9~10ヶ月頃から母乳に加えてお粥も与える。

1歳半を過ぎたら母乳を少なくしてお粥中心。

3歳頃には卒乳を考え、4歳になったらお乳はあげてはいけない。

と書かれております。

 

江戸時代は現代と違い乳幼児の死亡率がとても高かった時代です。過去の経験に学び、健康で病気になりにくい子育てをするためにこのような食育を行ってきました。

 

「硬いものを噛ませれば顎が育つ」という何の根拠もない誤った離乳が広まっていますが、誤った情報に惑わされないようにお願いいたします。

当院では先人たちの知恵を学び、それに最新の知見を加えた食事指導を行っております。



②運動指導

正しく「食べる」「話す」「呼吸する」を行うにはそれを支えるだけの強い体幹が必要です。

この強い体幹はお遊びやお手伝いなどを通じて徐々に養われていきます。

当院では健やかな顎顔面口腔育成のために、お遊びや運動の指導も行っております


③エクササイズ

口腔機能に対するエクササイズは何十種類もありますが、当院では口腔機能の問題点に則した効率的なエクササイズを指導しています。

*エクササイズは一般的に他にも筋機能療法(MFT)やアクティビティなどと呼ばれています。

時折育児書などで書かれているエクササイズを自己流で子供に強いている保護者の方を見受けますが、結果が出ない努力を子供にさせるのは可哀想なので、絶対に自己流でエクササイズをさせないようにお願いいたします。


④小児口腔機能育成装置

口腔機能の発育不全や異常があり歯並び・噛み合わせが悪く矯正治療の適応の子供に対しては、どんなに早くても矯正治療や装置に対する理解が出来る5歳からしか始められません。

その矯正治療に移行するまでの間、小児口腔機能育成装置を使う場合があります。

この装置を使うことで理想的な乳歯列の正常咬合である切端咬合(上と下の前歯の先端同志が噛み合う状態)が再現されることで、咬合による適切な顔面への刺激が伝わり顎顔面の成長を促します。

③その他生活習慣指導

睡眠をはじめとして、スマホ・ゲームなど生活習慣の指導を行います。

 

年齢層 推奨される睡眠時間
新生児 0〜3か月 14〜17時間
幼児 4〜11ヶ月 12〜15時間
幼児 1〜2歳 11〜14時間
未就学 3〜5歳 10〜13時間
学齢期 6〜13歳 9〜11時間
ティーン 14〜17歳 8〜10時間
ヤングアダルト 18〜25歳 7〜9時間
大人 26〜64歳 7〜9時間
年配の大人 65歳以上 7〜8時間

米国国立睡眠財団より引用

4.口腔機能の発達の実際

口腔機能の状態は”咬み合わせ”や”歯並び”にかなり反映されます。

口腔機能が非常に良好なケースと非常に悪いケースを紹介します。

①良好な口腔機能発達のケース

こちらは非常に口腔機能が良好なお子様です。むし歯には非常になりやすく歯科的には問題がありますが、正常な乳歯列の3要件を全て備えています。

  1. すきっ歯:歯と歯の間に大きな隙間が多数あります。
  2. 切端咬合:上と下の前歯の先端同志が咬み合う状態です。
  3. 正中があっている:上下の歯並びが左右対称で顎の歪みがありません。

②問題のある口腔機能発達に対する介入

こちらは口腔機能の発達に問題のあるお子様に対して口腔機能の介入を我々が行ったケースです。

 

上下の歯を噛み合わせると上の前歯で下の前歯を完全に覆い隠してしまうほど深い噛み合わせです。

また既に乳歯の歯並びが重なっています。

 

ここから口腔機能発達不全に対する介入を行い、食事指導やエクササイズなど指導した結果、改善傾向を認めるようになりました。

 



ホーム / はやし歯科診療所について (院長紹介…) / ★はじめての方へ (医院理念  診療の流れ  感染予防…)  / 治療について 

 

※ご新規の方は行き違いを防ぐため、”治療について”ではなく、”★はじめての方へ” (医院理念  診療の流れ …) をご覧ください。

 

〒600-8846 京都府京都市下京区朱雀宝蔵町14

JR嵯峨野線 梅小路京都西駅から北西へ徒歩7分

TEL : 075-313-0024

 


予約フォーム

◆料金・お支払・保障制度

お支払方法について
保障制度

◆スタッフ募集

歯科衛生士求人・募集


◆カレンダー

スマホでご覧の方へ:スマホを横向きにすると、カレンダーを見やすくなります

 


◆診察時間

 

午前 8:30~14:00

8:30~15:30

午後 16:00~18:00

【〇:診療あり  -:休診】

※ 診療時間:土曜は毎週 8:30~15:30

 ・最終受付時間は各最終診療時間の30分前まで

・特に土曜日の診療時間は公務が多く不定期にかわりますので、電話にて直接お問い合わせください。 

ご新規の方は、"はじめての方へ" (医院理念  診療の流れ …)をご覧ください

 



お問い合わせフォーム