歯の病気のほとんどがむし歯と歯周病です。
これらの原因はともに歯面に付着している細菌性プラークです。このプラークが残存している限り、必ずむし歯・歯周病のリスクが存在いたします。よってむし歯や歯周病を効率的に予防していくためには、これらが細菌に起因する感染症であるという認識が必要となります。
この30年で歯科医院の数が増え受診しやすくなり、砂糖の消費量も減少し、平均的な歯ブラシの回数も増えました。
しかしむし歯・歯周病ともに改善はしているとは言えないのが現状です。
特に諸外国と比較すると日本は砂糖の消費量のわりにむし歯の本数が非常に多いことがわかります。
理由は明らかで、直接の原因である細菌に対しての取り組みが全くなされてこなかったからです。 しかし皆様の多くは歯の具合が悪くなってはじめて歯医者さんを訪れ、結果として歯医者さんの業務の大半は歯を削ることでした。
歯を削る治療は短期的には簡単に治療が済みますが、将来削った量だけリスクを背負うことにもなります。これでは修復物の劣化に伴いまた悪くなって、治療を繰り返すうち徐々に健康な歯質が失われ、最後には歯がなくなってしまいます。
では原因の細菌に対する取り組みとして「がんばって歯ブラシする」、それも大事ですが、それだけでむし歯・歯周病は防ぐことが難しいことは、既述のデータから明らかで、歯科医院で定期的な歯のお手入れを受けられた方は失う歯の本数が非常に少なくなっております。
歯みがきだけで歯の健康を維持しようとすると、どれだけ正しいブラッシングを実践できたとしても1日に何時間も歯みがきに費やす手間もかかり、とてもそんなことはしていられないことと思います。
歯の健康づくりを実践するには、ご自身の努力で取れるクリーニングと、歯科医院でしか取ることができないクリーニングとを明確に区別して、この両者を効率的に組み合わせることが何よりの近道となります。
そこで我々は定期的に患者様のお口の健康リスクをチェックし、入念なクリーニングや効率的な口腔衛生指導を行い、少ない努力でむし歯・歯周病予防が実現できる体制を整えています。
しかし、歯面に付着したプラークが長く除去されずに残っていると、凝集した細菌がネバネバした物質を作って、菌の周りを取り囲む結果、歯面に強くこびりつき、台所や浴室などにみられるガンコな汚れと同様に、歯ブラシが多少当たっても除去しづらい状況になります。
このようなものを最近ではバイオフィルムと呼んでおります。
では、むし歯や歯周病の原因となる細菌性プラークについて、詳しく見ていきましょう。
歯の表面をクリーニングで完全に露出させた状態は、一瞬で唾液のタンパク成分によるペリクルと呼ばれる被膜に覆われます。
しかし歯の健康が保たれている方も、そうでない方も実はお口の中に存在する細菌の数に大きな違いは無く、おおよそ100億個の細菌が常に存在しています。この数多くの細菌の一部が被膜であるペリクルに結合して、細菌性プラークの発育が始まります。
ただ、この状態のプラークに生息している細菌は口腔内の細菌の中でも善玉菌が大半で、ほとんど病原性がありません。
さらにこの時期のプラークは歯面との結合が弱く、歯ブラシなどで容易に除去できます。
このプラークのネバネバした性状によって、さらに新たな細菌が付着しやすい環境になります。この時期のプラーク上に新たに付着する細菌の多くは強い病原性を有しており、むし歯・歯周病にとって大きなリスクとなります。この状態のプラークは1日でも早く除去する必要がありますが、細菌間に存在する強力なネバネバ物質の作用によって、うがい薬は全く浸透せず、歯ブラシのみで除去することが困難になっております。
このように成熟したプラークに対処するには、歯科医院で専用の器具を用いて物理的にプラークを除去できる歯面清掃が必要になります。
※ライオン歯科衛生研究所より資料提供