歯の健康を維持する上で、ブラッシングを丁寧にしていただくことは確かに重要ですが、それだけでは歯の健康は維持できません。
むし歯や歯周病の原因となるものが、細菌の塊である歯垢(プラーク)です。
このプラークは時間とともに、性状が大きく変わります。
まず、このプラークについて詳しく解説いたします。
歯の表面は、唾液にさらされてすぐに唾液中に含まれているペリクルと呼ばれるタンパク質が付着します。
それからこのペリクルの表面に口腔内に常在している細菌が付着し、プラークがはじめて形成されます。この状態のプラークは歯面との付着が強固ではなく、ご自身の歯ブラシで簡単に除去ができます。
しかし、初期のプラークが除去されず長期間、残っているとプラーク中の細菌からネバネバ物質が作られる結果、プラークが歯面に強くこびりつくようになり、簡単に歯ブラシで除去しづらくなるとともに、新たな細菌が付着しやすくなります。
このように成熟したプラークは、むし歯や歯周病にとって病原性の強い細菌が多く含まれるため、徹底的な除去が必要になります。
しかし、プラーク自体が非常にネバネバした性状になって歯面と強固に付着しているため、ご自分の歯ブラシで除去することはきわめて困難な状態になります。よってこの状態のプラークを除去するには歯科医院で専用の器具を使ったクリーニングが必要になります。
歯の健康を脅かすプラークに対処していくには、ご自身でお手入れしていただくセルフケアと、歯科医院で定期的に行われるプロフェッショナルケアとの役割分担を明確にし、これらを効率的に組み合わせることが歯の健康を維持する上で最も重要なことです。
それでは、具体的に当院で行われるプロフェッショナルケアの流れをご説明いたします。
1.まず口腔内の状態を診査し、問題のあるところがないか否か、診断いたします。もし、問題箇所が見つかった場合は、プロフェッショナルケアを延期し必要に応じた治療を行います。
2.歯周病の基本的な検査を行い、歯周病の状態を診断します。
3.多くの場合、歯石の付着が認められることから、まず歯石除去を行います。
4.歯石が取り終わったら、専用の器具で歯垢(プラーク)を除去いたします。
5.歯科医院でクリーニングを受けていただくことによって、プラークが付きにくくなります。
6.このようなクリーニングを定期的な管理の下に、反復することによってプラークの少ない口腔内を維持でき、むし歯や歯周病の予防に大きく前進することができます。
よくヤニ取りのために保険診療で3カ月に1回、歯科医院でクリーニングを受けておられるということを多くの方からよく耳にします。
しかし保険診療で行われるものは歯石取りと機械的歯面清掃です。
歯石取りに最もよく用いられる器具は超音波スケーラーですが、この器具はあくまで歯石を取るための道具であって、ヤニや着色を取るための道具ではありません。
また機械的歯面清掃はあくまでブラッシングで除去が困難な歯垢(プラーク・バイオフィルム)を除去するために歯の表面を傷つけない程度のマイルドな研磨剤で行います。
しかしこれらの処置でヤニ取りを行ってしまうと歯の表面は削り取られ、細かな亀裂(クラック)も入ってしまい、虫歯になりやすくなってしまいます。また表面は非常に粗造となってしまうため、ますますヤニがつきやすくなってしまいます。
そこで当院ではなるべくデリケートな歯の表面を傷つけることなくヤニ取りを行い、処置後にはヤニが再付着しにくいようにアパタイトコートも行っております。
よって頑固なヤニやステインの除去をご希望される方は、別途ヤニ取りの施術をご検討ください。