歯ぎしり・食いしばりについて

1.歯ぎしり(ブラキシズム)の分類

① タッピング(カチカチ噛み)

無意識に開閉口を小刻みに繰り返してカチカチと音を立てながら上下の歯を当てる状態。通常は、そのまま放置しても問題を生じることはほとんどありません。

② グラインディング(歯ぎしり)

下顎を左右前後に動かして、ギシギシと音を立てながら上下の歯を臼のようにすり合わせる状態で、他人から指摘されやすいタイプです。多くの方が”歯ぎしり”と想像されているのがこのグラインディングです。極端に強い力でのグラインディングは歯を大きくすり減らしてしまい、噛み合わせの高さを低くしてしまいます。一般的にこのグラインディングは良く無い動きと言われていますが、それは西洋人の咀嚼運動を基準に考えられているためで、日本人にとってはかえって適度ななグラインディングは好ましい咀嚼運動となります。

③ クレンチング(食いしばり)

じっと同じ位置で上下の歯に強い力を加える状態で、いわゆる”食いしばり”です。歯の破折や顎関節症、知覚過敏、歯の神経(歯髄)の炎症を引き起こす大きな原因です。このクレンチングは音がせず、顎の動きも止まっているので、睡眠中に行っていても他人から指摘されることが少なく、歯ぎしりの中で最も発見されにくいものです。一般的にこのクレンチングは最も悪い咀嚼運動と広く言われております。

しかし適度なクレンチングは正常な嚥下(飲込み)の大きな補助となるばかりでなく、噛み合わせの悪い方にとって顎がずれてしまうのを防いでくれる役割もあり、むやみに無くしてしまうことはよくありません。


2.歯ぎしりの要因

① 睡眠時無呼吸

睡眠時無呼吸が生ずると、睡眠中に無意識に苦しくて歯ぎしりを始めます。そして脳が覚醒して酸素不足を察知すると、いびきをかいて大きな呼吸をし始めます。すると酸素が入ってきて脳は睡眠状態に入りますが、また睡眠時無呼吸によって歯ぎしりをし始めます。

こういったことが睡眠時無呼吸では睡眠中に何度も繰り返されています。

② 悪い咬み合わせ

もともと下あごが小さい方、

審美的な歯科治療で前歯を引っ込めてしまった結果、下あごが後ろに下がってしまった方、

 

このような場合、下あごにくっついている舌が根元ごと後ろに下がってしまう結果、スムーズな顎の動きが阻害されてクレンチング(食いしばり)が生じるだけでなく、気道を閉塞させてしまい睡眠時無呼吸の原因にもなります。

③ 悪い”咀嚼(そしゃく)パターン”

下あごがらせん状に動いて上下の歯が合わさって食物をちぎってすり潰し、唾液と混ぜてドロドロにする一連の動作を”咀嚼(そしゃく)”と言います。

この咀嚼は生れてから正しく授乳し、正しく段階的に離乳食を食べていく中で自然に学習していきます。

しかしそこで間違った食育をしてしまうとスムーズな咀嚼パターンを得られず歯ぎしりの原因を子どもに作ってしまいます。


3.歯ぎしりの弊害

① 歯周病

歯ぎしりによる過剰な力が歯にかかって、歯を揺らしてしまうことで歯を支えている歯ぐきや骨を痛めてしまいます。いくら歯磨きを頑張っても防ぐことができません。

② 虫歯

長年、過剰な力が歯に加わり続けていると、歯にヒビ(クラック)が入ってしまいます。そのヒビは次第に広がり細菌が通るようになり虫歯が発生します。

また既に入っている詰め物・被せ物を留めている接着材が歯ぎしりの力で壊れてしまって、その隙間から虫歯が出来てしまうこともあります。

③ 顎関節症

歯ぎしりによる過剰な力のストレスは、歯・歯ぐきに限らず顎関節にも及びます。

その結果、顎関節症を発症してしまうことも少なくありません。

④ 知覚過敏・歯髄壊死

強い力が歯にかかり続けていると、以下のようなことが起こり得ます。

・歯ぐきが減って歯根露出面積が大きくなる

・歯ぐきの付け根付近の歯が欠けてしまう

・歯の内部に多数の亀裂が入る

・歯に血液を供給している毛細血管が圧迫されて歯の神経(歯髄)の循環障害が生ずる

上記のことが積み重なると歯の神経(歯髄)は炎症状態になり、知覚過敏を発症します。

さらにこの状態が続くと歯の神経の細胞が死んでしまって歯髄壊死に至ることもあります。

4.歯ぎしりへの対応

① 認知行動療法

まず自分自身、歯ぎしりの癖があると自覚していない方が大半なので、そこを我々が説明して自覚していただくところから始まります。そして常に「自分は歯ぎしりをやっているんだ。」と意識し、それを思い出させるために身の回りにそれを気付かせる印を貼っていただきます。そして常にリラックスした状態を維持することで歯ぎしりを予防します。

② 歯ぎしり防止のエクササイズ

長年の歯ぎしりの習慣は癖になってしまって、筋肉や神経がそのパターンを覚えてしまっています。そこで種々のエクササイズを継続することで、自然に筋肉や神経の運動パターンを変えていきます。

当院でもよくこのエクササイズは指導を行っています。

覚醒時の歯ぎしりに対してはこのエクササイズで主に対応します。

③ 寝具の調整

睡眠中の呼吸の乱れは歯ぎしりを生み出す大きな原因です。その睡眠中の呼吸を少しでも改善するには寝具の調整も大切です。

高すぎる枕や、沈み込みすぎるマットレス、不適切な腕枕などで睡眠中の呼吸は悪くなります。

④ 筋肉・筋膜の圧迫・マッサージ

咀嚼に関連する筋肉、それも特に筋膜の傷んだところの修復を後押しし、可動性を増すためにご自身で行う圧迫やマッサージは有効です。しかしやり方によってはかえって筋膜を痛めてしまうこともあるので、必ず専門家の指導を受けて行ってください。

⑤ マウスピースの作成

・極端に歯ぎしりのきつい方

・上記の①~③全てを行ったけれど歯ぎしりが改善しない方

・歯の症状が強く早急に歯ぎしりを改善しなければならない方

このような方には歯ぎしり防止用のマウスピースを作って対応します。