産まれたての赤ちゃんの口腔内にはほとんど細菌が生息しておりません。その後、外界から様々な細菌が口腔内に入ってその一部がそのまま定着します。そして生後6ヶ月頃に下の前歯が生えてくると歯に付着しやすい細菌の定着が始まります。
虫歯の発生は食生活にも左右されます。お砂糖がたっぷり入ったものは虫歯になりやすいですが、まだ味覚が発達していない時期から甘い食べ物を子供に与え続けていると、甘い物に対する依存が強くなってしまいます。
よって子供のうちはなるべく甘い食べ物を摂らせないことが望まれます。
また甘い物でなくとも白米やパンなどの糖質も歯に付着して虫歯の原因になりやすいので、糖質に依存させない食生活を定着させることも有効です。
妊娠中にはエストロゲンやプロゲステロンと呼ばれる女性ホルモンが血中に多く分泌されます。これらのホルモンは全身の血液循環を介して歯と歯茎の境目にある歯周ポケットにも行き渡ります。
ところが一部の歯周菌はこれらの女性ホルモンによって大きく活性化され、歯周病が急速に悪化しやすくなります。
昔から俗説でお腹の赤ちゃんにカルシウムを取られるから妊娠中に歯が悪くなるというのは間違いで、実は妊娠中の女性ホルモンによって歯周病が進んでいたのです。
でもご安心ください。普段より厳しめで歯周病の管理を行ってさえいれば、歯周病が進行することはほとんどありません。そのためにも日頃のブラッシングもさることながら、歯科医院でしっかり歯周病の管理をお受けになることが重要です。
歯と歯ぐきの境目にある溝に炎症が生じると歯周病が進行しますが、仮に28本全ての歯に5ミリの深さの歯周ポケットが生じると、手のひら一面の皮膚が潰瘍でただれてしまっているのと同じくらいの傷の程度でもちろん身体に悪影響を及ぼします。
特に歯周病で歯ぐきに炎症が生じると、そこでサイトカインと呼ばれる物質が作られ全身の血流に乗っていきます。このサイトカインは傷の修復などに深く関わる重要な物質ですが妊娠にとっては都合よくありません。お腹の中の赤ちゃんの成長が阻害され低体重児が起きやすくなったり、早産の危険性が増加します。
妊婦の皆様は飲酒や喫煙など妊娠のトラブルのリスクとされるものに注意されておられると思いますが、この歯周病も同様にご注意ください。
妊娠中は絶対に歯科治療を受けられないと誤解されている方も多くいらっしゃいますが、実は大部分の歯科治療は安心して受けていただくことが出来ます。
虫歯の詰め物や被せ物治療や特に妊娠中に注意しなくてはならない歯周病治療など行うことができます。
また飲み薬も妊娠に対する悪影響が長年報告されていない安全な薬の中から選びますのでご安心ください。
最も妊娠中に避けなくてはならない治療の一つが抜歯や手術など出血が伴う処置です。
出血を伴う処置を行うと、その傷口をご自身の身体が治そうとして多くのサイトカインを発生させます。妊娠中に親知らずなどが腫れて痛みだすトラブルもしばし生じますが、妊娠中には抜歯手術を行えないため出産後まで飲み薬で引き延ばすことも少なくありません。