「食べる」「話す」「呼吸する」などのお口の機能が十分に発達しない、異常があるなどの15歳未満のお子様の「口腔機能発達不全症」に対して新しい病気として分類され、治療に際して保険診療が使えるようになったため、少ない費用でどなたでも気軽に治療が行えるようになりました。子供のうちのお口の機能の異常は生涯を通じて様々な成長や健康に悪影響を及ぼします。大きな問題になる前に速やかに問題点を見つけ的確に対処することによってお子様の健康な発達を周りの大人で支えていきましょう。
江戸時代の武将は生まれるとすぐに母親から引き離され乳母が育児をする習慣がありました。
その習慣は時代を経るにつれてさらに強くなり、食べることを含めあらゆる身の回りのことを何も自分でやらないまま育っていった結果、徳川将軍では代を重ねるごとに顎が細く・長くなっていってしまいました。
このことからも如何に誤った子育てが良くないかがわかります。
「食べる」という動作には「食べ物を口で捉える」「前歯で咬み切る」「奥歯ですり潰す」「ペースト状の塊にする」「喉に送り飲み込む」といった一連の動作が無意識のうちに行われます。
しかしこれらの動作を正しく習得するには出生後の授乳から離乳食・常食への正しい移行、咀嚼・嚥下を支える体幹作りなどが必要になります。
この方法や順序を間違えてしまうと悪習癖が身についてしまい、その対応が遅れるほど軌道修正が難しくなります。
正しい発音を行うには正常な唇・舌・喉の動きが欠かせません。
滑舌が悪いということは、これらの機能が異常である一つの兆候です。
よく「この子はまだ赤ちゃん言葉が抜けないけれど、大きくなったら自然に治るからそれまで様子を見ましょう。」と対応されることをよく耳にしますが、問題を放置したまま様子をみても良くならないことが大半です。
正しい発音を行うには正常な唇・舌・喉の動きが欠かせません。
滑舌が悪いということは、これらの機能が異常である一つの兆候です。
よく「この子はまだ赤ちゃん言葉が抜けないけれど、大きくなったら自然に治るからそれまで様子を見ましょう。」と対応されることをよく耳にしますが、問題を放置したまま様子をみても良くならないことが大半です。
いびきは喉の空気の通り道が狭くなり、その狭いところに呼吸の空気が通過する際に振動による音が生じて起きる現象です。
原因としてアデノイドや口蓋扁桃等の喉のリンパ組織が腫れてなることもありますが、下顎が後方に下がりすぎる、舌が下方に沈下する等によってもいびきが生じます。
特に下顎が後方に下がる、舌が下方に沈下することは口腔機能と大きく関連しています。
いつも口が開いていると発育上だけでなく健康上も大きな問題を生じます。
歯並びは内からは舌が、外からは頬や唇が押し合い、そのバランスで歯が並びます。
しかしずっと口が開いているとこの舌・頬・唇の筋肉のバランスが崩れてしまい、歯並びが崩れてしまいます。
またずっと口呼吸でいると、鼻のフィルター効果や加湿効果が得られず風邪やインフルエンザなどにかかり易くなります。さらに鼻呼吸による脳の冷却効果も無くなり脳への悪影響を生じます。
歯並び・噛み合わせが悪くなる原因には遺伝的な要素もありますが、お口の機能的な問題よる要素も非常に大きいです。
正常な乳歯列は以下の要素が挙げられます
異常な歯並び・噛み合わせには以下のものが挙げられます
日本の厚生労働省から発表されている離乳食のガイドでは18カ月を目途に離乳の完了を推奨しています。しかもまだこの時期は殆どの子供で乳臼歯が生え揃っていないので食べ物を歯ですり潰すことが出来ないのにご飯を推奨しています。
咀嚼能力が備わっていない段階で食形態を上げてしまうと、下顎を奥に押し込んで食いしばった噛み方を覚えてしまいかえって口腔の発育を抑制させてしまいます。
一方WHOでは理想的な成長、発達、健康を促すために生後6カ月まで母乳のみの育児を行い、 その後は適切な食事を補いながら2歳かそれ以上まで母乳を続けることを推奨しています。
また江戸時代、香月牛山によって書かれた育児書「小児必要養育草」では
1歳半までは母乳中心
下の歯が生える9~10ヶ月頃から母乳に加えてお粥も与える。
1歳半を過ぎたら母乳を少なくしてお粥中心。
3歳頃には卒乳を考え、4歳になったらお乳はあげてはいけない。
と書かれております。
江戸時代は現代と違い乳幼児の死亡率がとても高かった時代です。過去の経験に学び、健康で病気になりにくい子育てをするためにこのような食育を行ってきました。
「硬いものを噛ませれば顎が育つ」という何の根拠もない誤った離乳が広まっていますが、誤った情報に惑わされないようにお願いいたします。
当院では先人たちの知恵を学び、それに最新の知見を加えた食事指導を行っております。
正しく「食べる」「話す」「呼吸する」を行うにはそれを支えるだけの強い体幹が必要です。
この強い体幹はお遊びやお手伝いなどを通じて徐々に養われていきます。
当院では健やかな顎顔面口腔育成のために、お遊びや運動の指導も行っております
口腔機能に対するエクササイズは何十種類もありますが、当院では口腔機能の問題点に則した効率的なエクササイズを指導しています。
*エクササイズは一般的に他にも筋機能療法(MFT)やアクティビティなどと呼ばれています。
時折育児書などで書かれているエクササイズを自己流で子供に強いている保護者の方を見受けますが、結果が出ない努力を子供にさせるのは可哀想なので、絶対に自己流でエクササイズをさせないようにお願いいたします。
口腔機能の発育不全や異常があり歯並び・噛み合わせが悪く矯正治療の適応の子供に対しては、どんなに早くても矯正治療や装置に対する理解が出来る5歳からしか始められません。
その矯正治療に移行するまでの間、小児口腔機能育成装置を使う場合があります。
この装置を使うことで理想的な乳歯列の正常咬合である切端咬合(上と下の前歯の先端同志が噛み合う状態)が再現されることで、咬合による適切な顔面への刺激が伝わり顎顔面の成長を促します。
睡眠をはじめとして、スマホ・ゲームなど生活習慣の指導を行います。
年齢層 | 推奨される睡眠時間 | |
---|---|---|
新生児 | 0〜3か月 | 14〜17時間 |
幼児 | 4〜11ヶ月 | 12〜15時間 |
幼児 | 1〜2歳 | 11〜14時間 |
未就学 | 3〜5歳 | 10〜13時間 |
学齢期 | 6〜13歳 | 9〜11時間 |
ティーン | 14〜17歳 | 8〜10時間 |
ヤングアダルト | 18〜25歳 | 7〜9時間 |
大人 | 26〜64歳 | 7〜9時間 |
年配の大人 | 65歳以上 | 7〜8時間 |
米国国立睡眠財団より引用
口腔機能の状態は”咬み合わせ”や”歯並び”にかなり反映されます。
口腔機能が非常に良好なケースと非常に悪いケースを紹介します。
こちらは非常に口腔機能が良好なお子様です。むし歯には非常になりやすく歯科的には問題がありますが、正常な乳歯列の3要件を全て備えています。
こちらは口腔機能の発達に問題のあるお子様に対して口腔機能の介入を我々が行ったケースです。
上下の歯を噛み合わせると上の前歯で下の前歯を完全に覆い隠してしまうほど深い噛み合わせです。
また既に乳歯の歯並びが重なっています。
ここから口腔機能発達不全に対する介入を行い、食事指導やエクササイズなど指導した結果、改善傾向を認めるようになりました。