ほとんどの場合、高齢による口腔機能の低下は急に起きるわけではありません。
おおよそ3段階に分けられ、それが徐々に階段を下っていくように進行していきます。
このように口腔機能が加齢などによって悪化していく一連の流れのことをオーラルフレイルと呼びます。
若い時と比較して自分自身の口の中のことに対する関心が薄れることを指します。
例えば、「”1本欠けてしまった歯がある”、”何となく痛い歯がある”、でも日常生活には支障が無いし、若い頃と違って歯医者さんに通うのも億劫なので、このまま放置しておこう」、といった状態が実は口腔機能低下が加速するきっかけになります。
年齢を重ねていく中で、以下のようなことが当てはまる方は要注意です。
もう既に口腔機能低下症に該当している可能性があります。
口腔機能低下症では口腔機能にかかわる以下の7項目を検査し、そのうち3項目以上該当する口腔機能低下症として診断されます。
この口腔機能低下症をそのまま放置してしまうと、後述の摂食機能障害に悪化しやすくなります。
ただしまだこの口腔機能低下症の段階できちんと対応すれば、進行を防ぎ健康な状態に戻せる可能性があります。
前述の口腔機能低下症がさらに進行してしまうと、摂食機能障害になってしまいます。
この状態になってしまうと、十分に”噛めない”、”飲み込めない”、”すぐにむせてしまう”などの重篤な障害を引き起こします。
一旦この摂食機能障害に陥ってしまうと、口腔機能低下症と違い良い状態まで改善することが非常に厳しくなります。
口腔衛生状態を評価するため、口腔内細菌数を計測する機械で検査を行うか、舌の表面を9分割して各エリアの汚れを積算して評価する方法があり、当院では舌の表面の汚れを評価する方法を採用しています。
舌が汚れていると、そこに付着している細菌が誤嚥性肺炎を引き起こす大きなリスクになります。
また舌の汚れは舌が正常に動いているかどうかのバロメーターとなり、嚥下機能の指標の一つとなります。
口腔乾燥状態を計測するにはサクソン法と呼ばれるガーゼを噛んでいただく方法と、ムーカスという舌の湿潤度を計測する機器を用いる方法の二つがあります。
サクソン法は2分間もガーゼを噛んでいなくてはいけないためとても苦痛な検査になります。
そのため当院ではムーカスを用いて苦痛なく瞬時に測定できる方法を採用しています。
咬合力を調べる方法としてデンタルプレスケールという専用の計測機器を用いる方法と、歯の残っている本数がおおよそ咬合力と相関関係があるので歯の本数をカウントする方法があります。
当院では歯の本数をカウントする方法を採用しています。
”オーラルディアドコキネシス”と呼ばれる検査を行います。”パ”(口唇の動き)、”タ”(舌前方部の動き)、”カ”(舌後方部の動き)、それぞれの発音を5秒間連呼していただきその数をカウントします。
当院ではカウントの正確性と迅速性を得るために”健口くんはんでぃ”という専用の計測機器を用いています。
舌を持ち上げる力が嚥下能力と強い相関関係があることが証明されています。
そのため客観的に舌を持ち上げる力を計測するための舌圧計を用います。
検査に全く痛みは無くごく短時間で終わります。
咀嚼機能(食物をすり潰す機能)を測定する方法として専用のグミゼリーを噛んでいただき、その潰れ具合を形態で判定する方法と噛んで唾液中に溶出したグルコース濃度を測定する方法があります。
当院では検査の客観性を得るために”グルコセンサー”というグルコース濃度を測定する方法を採用しています。
嚥下機能(飲み込みの機能)を調べるのに国際的に用いられている”EAT-10”という質問形式のアンケートを行っております。
目が不自由で文字が読みづらい方にはスタッフが介助につきますのでご安心ください。
歯みがき習慣、ブラッシング方法、ブラッシングに用いる道具、入れ歯の洗浄法などの指導を皆様お一人ごとの状態に合わせた指導を行います。
口を潤すための水分摂取・うがい・保湿剤の使用、唾液分泌促進のための口の体操、唾液を運ぶ管が詰まり気味の方に対しては唾液腺マッサージの指導などを行います。
歯の本数が少ない、今使っている入れ歯が不調などで嚙み潰す力の弱い方には入れ歯の治療などを行います。
滑舌をよくさせるための訓練を指導します。
また口を結ぶ力が弱い方にはトレーニング器具を用いた訓練を指導します。
舌を上に持ち上げる力が弱い方には専用のトレーニング器具を用いた訓練などを指導します。
歯が無い、入れ歯の調子が悪いなどで食べ物をすり潰す咀嚼機能が低下している方には、歯や入れ歯の治療を行います。
また顎や舌の動かし方が悪くて十分咀嚼できない方には、咀嚼運動に役立つ訓練や、食事内容の指導なども行います。
食べ物を飲み込む機能、嚥下機能が低下している方には飲み込む力を鍛える訓練を指導します。
また正常な嚥下を行うためには正しい呼吸動作が必要です。そのため呼吸訓練も指導することがあります。
さらに口腔機能低下症よりさらに進行してしまって摂食機能障害の疑いがある場合、嚥下内視鏡による嚥下機能精密検査を行います。